エリート御曹司と愛され束縛同居
「……へえ? 澪、俺の本気を疑ってたのか?」


絶対零度かと思うほどの低い声にこの場から逃げ出したくなる。

「う、疑うとかではなくて、わかりにくい……」

「お前がきちんと聞かないからだろ」

「付き合って間もないのにどうやって聞くの? そんな自信もてません」

「変なところは強気なのになんでそこだけ弱気なんだよ。だからお兄さんの話も伝えなかったのか?」

「……ちょうど新ホテルが山場の時だったし、負担をかけたくなかったから」

「何度も言ってるが、お前以上に失いたくない存在はいない。だが澪が一番大事だと言いながら結局苦しめて、本心を言い出せない雰囲気を作ってしまったのは俺だ。……一番必要としていた時に傍にいられなかった、ごめんな」

苦渋の表情を浮かべる姿に胸が締めつけられる。

「遥さんは悪くない、お願いだから謝らないで。自信がないって言い訳して、あれこれ抱え込んでしまった私が悪いの……ごめんなさい。これからはなんでも話すから」

「そうしてほしい。これ以上あいつに負けたくないし、澪を譲るつもりはない」

「あいつ?」

「俺にとっては圭太が一番のライバルだから」

眉間に皺を寄せ、険しい表情を浮かべる。

「圭太? なんで?」

「お前はそう思ってるかもしれないがあいつはそうじゃない可能性もあるだろ」

「まさか、圭太をそんな風に想ったことなんて、生まれてから一度もないよ」

「……わかってる。澪を疑っているわけじゃない、ただの嫉妬だ。圭太は俺よりお前をよく知ってるから」

少し拗ねたような口調を可愛いなんて思ってしまう私はきっと重症な恋の病にかかっている。

嫉妬されて嬉しいなんて口にしたら怒られてしまうだろうけれど、不謹慎にも胸が高鳴って頬が熱くなる。


「澪を誰にも譲るつもりはないからな?」


妖艶な眼差しを向けられて一気に体温が上昇する。

可愛いなんて思っていたのが嘘のように隣の恋人は大人の色香を醸し出す。
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