エリート御曹司と愛され束縛同居
「遥さん、本当にありがとう。私を選んでくれて、今日この場に来てくれて」

「俺のほうこそありがとう。澪に出会えてよかった」

歩みを止めて私と向き合う。

「是川に澪を秘書に打診した話を聞いたか?」

唐突な質問に小首を傾げつつも頷く。

「視察の日、俺も同行していたんだ。まさかあの受付の女性が圭太の幼馴染みだとは知らなかった。でもあの日のお前の姿がなぜかずっと頭から離れなかった。その後、再会して、運命なんて信じていなかったのに、信じてみたいと思ったよ」

大きな手がそっと頬を包む。

その温かな感触に胸が甘く締めつけられる。


そんなにも前に出会っていたの?


知らされた事実に驚きを隠せない。

「圭太は俺よりも前にその件を知っていたらしい。俺が急遽帰国するとまでは予想していなかったらしいが、いつか俺たちが出会えるようにずっと願ってくれていたそうだ」

相変わらずそつのない幼馴染みの姿が脳裏に浮かぶ。

「そうだったんだ……」

どこまでも思いやり深い幼馴染み。圭太がいなければこの恋は叶えられなかった。

「俺としては悔しい気もするけどな。でもそのおかげで今、澪がここにいてくれる」

そう言って私を広い胸に抱きしめる。
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