エリート御曹司と愛され束縛同居
「この家を建て直そうと思うんだ」


母が自身の左隣に腰をおろしたのを確認した父が唐突に言った。


建て直す……改築? 


この家は築六十年以上は経っているので改築は賛成だ。

「いいんじゃない? 水回りのリフォーム工事はしてたけど、さすがに色々古くなってきているから」

「そうなの。階段も勾配が急だし、今後、二階に上がるのが大変になるかもしれないでしょ? それでどうせ建て直すなら二世帯住宅にしようと思うのよ」

母が目を輝かせて言い放つ。

……二世帯住宅? 確かに庭をなくして、一戸の家の規模を今より少し小さくしたら不可能な話ではない。

でもそれよりも確認したい事案がある。

「ええっと、誰と誰が住む二世帯住宅なの?」

「もちろん私たちと凪たちよ」

母が当たり前でしょ、と言わんばかりの表情で言う。


お兄ちゃん? なんでいきなりお兄ちゃんの話が出てくるの?


「ちょっと待って、どうしてお兄ちゃんなの? 私はどうなるの?」

「澪はいずれ嫁ぐだろ」

父が落ち着いて言う。

どうしてそう言い切れるのか心底教えてもらいたい。嫁ぐ予定も、そもそも娘に恋人すらいないとわかっているはずだ。

「そうよ。一緒に暮らしてもいいけど、そろそろ独り暮らしをしたらどう?」

満面の笑顔で勧められる。


もしかして実家を追い出されそうになってる?
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