エリート御曹司と愛され束縛同居
「なんでそんな話になるの? お兄ちゃんは結婚して、ほかの場所に住んでるんだから、わざわざ二世帯住宅にして呼び戻さなくたっていいでしょう」

兄一家の住むマンションは実家から自転車で十五分ほどの距離にある。

「凪は今の住まいがちょうど更新の時期で、手狭になってきたから引っ越しを考えているらしいんだ。私たちも建て替えを検討していたし、今後なにかあった際に近くにいたほうがお互いに便利で安心だろう。ここなら家賃も必要ないし」

父はニコニコと機嫌よく話す。もっともだし、理にかなった話だと思う。

とはいってもいきなり二世帯住宅だなんて、瑠香さんが嫌がるはずだ。脳裏にいつも朗らかな義姉の顔が浮かんだ。

すると私の考えを読んだかのごとく母が言う。

「瑠香さんはとても喜んでくれていたわよ。職場に近くなるし、保育園がお休みの時は私が昌ちゃんを預かる予定だし」


……そうだった。我が家の嫁と姑は昔からとても仲が良かった……。


がっくりと項垂れる。

義姉は保育士をしているため多忙だ。自身の保育園で昌ちゃんの預かりは不可なので、毎日少し離れた保育園に預けていると聞いた記憶がある。


だとしたら……私はとても肩身が狭いのではないだろうか。
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