エリート御曹司と愛され束縛同居
こうなるともう、嫌な予感しかしない。


昔から兄は結婚願望がとても強い人で、就職したらすぐに結婚したいと学生時代から口癖のように言っていた。

対する私は学生時代から、兄ほど結婚に夢を見ていなかったので、圭太にはよく両極端な兄妹だな、と呆れられていた。

同居になったら、間違いなく四六時中結婚を勧められる。今でさえ顔を合わせる度に言われるのだから。


最悪だ……下手をしたらお見合い話さえ持ってきかねない。


嬉しくない予感にサーッと身体中から血の気がひく。

「基本的な図面はできてるの。全面的に取り壊すつもりだから、引っ越し準備を早めにしておいてほしいのよ」

母の嬉々とした言い方から、この計画が随分前から立てられていたと思い知る。

「どうしてもっと早くに言ってくれなかったの? せめて相談くらいしてくれたって……」

仏頂面で睨むと、向かい側で並んで座る両親は穏やかに言う。

「話したら絶対に反対するでしょ。いい機会だし、そろそろ独り立ちを考えなさい。亜由美ちゃんも独り暮らしをしてるんだから」

「亜由美は勤務体系がシフト制で不規則だし、退社時間も夜遅くてなにかと不便だからって言ってたわよ。私とは事情が違うじゃない」

「でも独り暮らしをしている事実に変わりはないでしょう。ああ、それと新居が完成するまでの仮住まいはこの図面のマンションになるから」


もう仮住まいの場所まで決まってるの?


両親の用意周到さに舌を巻く。差し出された紙には仮住まいとなるマンションの詳細が記載されていた。
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