エリート御曹司と愛され束縛同居
「ここから随分離れてるじゃない! この住所だと駅までバスに乗らなきゃいけないし、しかもこの路線ってバスの本数がすごく少なくなかった?」

目を通して驚きの声を上げてしまう。

仮住まいのマンションはこの自宅からは少し遠い。

近くに大きなショッピングモールがあるので、通勤などで駅に出る必要がない人には便利な物件だけれど、このマンションから職場に通うとなると、バスの時間も含め、二時間以上はゆうにかかってしまう。

今でも通勤時間が長いと感じているのに、苦痛以外の何者でもない。

「ここしか空きがなかったんだから仕方ないでしょ。それに佐久間さんのおかげで好条件で貸してもらえたのよ。期間限定なんだし多少の不便は我慢してちょうだい」

会話に出てきた名前に反応する。用紙には佐久間グループ管理物件との記載があった。


……まさか圭太、この話を知っていたの? なんで教えてくれないの。


嫌な推測にギリッと奥歯を噛む。

この状況では独り暮らしをする以外の方法がない……けれどいざ独り暮らしをするとなると、お金もかかるし家事スキルも必要になる。

家事スキルは練習すればなんとかなる可能性は高いが、お金はすぐには増えない。

就職してから少しずつ貯金しているとはいえ、潤沢にあるわけではない。

できるだけ職場に近い場所に住みたいけれど、家賃はどれくらいなのだろう。引っ越し費用や生活費はどの程度必要になるのだろう。
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