エリート御曹司と愛され束縛同居
『……ただでさえ強引に住み着いていますし、難しいと思うのですが……』

できるだけ無難な返答をする。

もちろん是川さんは恋人役を引き受けた件も含め、この同居の経緯をすべて知っている。

『副社長は自分にも他人にもとても厳しい方です。対外的にはそういった剣呑な雰囲気はおくびにも出されないのであのご容姿も相まって、まるで物語の王子様のように思われておりますが本質はまったく違います』

『そうですね……』

その件については同感だし、そもそも王子様になんて到底思えない。

『ありのままのご自身の姿をひと握りの方にしか見せない方です。これまでどんな女性もその仮面ははがせませんでした。』


……どういう意味だろう。


軽く首を傾げながら尋ねてみる。

『ええと、それは私が取り繕う必要のない恋人役だからではないでしょうか……?』

契約者でもあり、圭太の幼馴染みでもある私に気遣いは不要という結論、それ以外に考えられない。

『答えはあなたが直接尋ねてみてください。無意識かもしれないので驚かれるかもしれませんが』

珍しく眼鏡の奥の目を楽しそうに細めて言われた。誰がなにを、とは確認できない。

そもそも是川さんがなにを伝えたいのかわからない。

副社長が実はとても親切で懐が深い人だと教えてくれようとしたのだろうか? それならもう十分、身をもって知っている。

是川さんの真意を未だにはかりかねている。
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