エリート御曹司と愛され束縛同居
「お疲れ様です。澪さん、途中まで一緒に帰りましょう」


仕事が終わり、地下のロッカールームで着替えを済ませ、社員通用口を出て会社の外に出た。

エアコンで冷えた身体にムッとむせ返るような暑さが一気に押し寄せる。

今日も日中は三十五度を超えていたらしい。今も温度は下がっていないような気がする。


「佳奈ちゃん、どこか行くの?」

後輩の最寄り駅は私の実家の最寄り駅の三つほど手前だ。独り暮らしを始めた、今の私とは逆方向になる。

「今日は学生時代の友人と女子会の約束があるんです」

ふわり、と淡いブルーの涼やかなワンピースの裾を翻した佳奈ちゃんが足を動かしながら言う。

そうなの、と返事をしつつ、連れ立って歩く。

手にしていた会社のIDカードをバッグに入れようとした時、スマートフォンに手が触れた。

着信を知らせるランプが点灯していたため、手に取って履歴を確認すると知らない番号が残っていた。

着信があったのは二時間前と一時間前、三十分前だ。今日は誰とも会う約束はなかったはず。


一体誰だろう?


一度の着信なら間違い電話かとも思うが、こう何度も着信が残っているとそうも思えない。
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