エリート御曹司と愛され束縛同居
「……圭太に頼まれたの? だから心配するの?」

こんな質問をしたいんじゃない、圭太について尋ねたいんじゃない。

こんなのはまるで僻んでいるみたいだ。ギュッと下唇を噛む。

「さあ、どうしてだと思う? ……澪、唇を噛むな、傷になる」

髪から指を外し、骨ばった指が私の下唇にそっと触れる。

意地悪な口調とは裏腹にその優しすぎる触れ方に心が揺さぶられる。

動悸が激しくなっていく。


気まぐれならやめてほしい。なんでこんなにも振り回すの?


心の変化についていけない。

困り果てて泣きそうになるとフッと目尻を下げられる。

その表情が蕩けそうなくらいに甘くて胸が苦しくなる。

「……圭太の言う通り、目が離せないな。迎えに行くから、これから遅くなる日はきちんと連絡して、お前の予定も直接俺に伝えろ」

穏やかな声でそっと囁いて、唇から指を離す。心に余裕のない私は素直に頷く。

早くここから解放してほしい。この人はやはり危険だ、傍にいると心が落ち着かない。


……まるで本当に恋をしているみたいだ。


「恋人なんだから、いい加減に副社長と呼ぶのはやめろ……話し方も仕事じゃない時はそのままでいい」

どことなく拗ねたような口調が耳に響く。

「で、でもなんて呼んだら……?」

「圭太は呼び捨てだろ?」

「それは……幼馴染みなので、副社長は上司で年上ですし」

口にした瞬間、軽く鼻をつままれる。

「な、なにを」

「役職で呼ぶなと言っただろう」
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