エリート御曹司と愛され束縛同居
「どうかされました、澪さん？」

「知らない番号から何度か電話があったみたい」

着信画面を見せると後輩も同様に訝し気な表情を浮かべる。

「三回も着信があるので間違い電話ぽくないですよね。なにか急ぎの用事でしょうか？」

「かけなおしてみる」

そう言って画面をタップすると、佳奈ちゃんが隣で大きな目を見開いて驚いた表情をしていた。

呼出音が数回なるけれど、すぐに留守番電話に切り替わってしまう。知らない相手にメッセージを残すのは躊躇われて通話を切る。

「びっくりしましたよ！　いきなり折り返し電話をかけるのは無防備すぎます。変な勧誘や詐欺の電話だったらどうするんですか」

真剣な表情で怒られる。

「え、ああ、ごめん。そっか、そういう可能性もあるのね」

「もう本当に、これだから澪さんは。仕事はしっかりこなされるのに意外に天然ですよね。佐久間(さくま)さんが心配される理由がよくわかります」

「でもかけ直さないとなんの電話だったかわからないでしょ？　大丈夫よ、番号非表示にしてかけたから」

「そうかもしれませんけど、変なところで逞しすぎるんですよ、澪さんは」

後輩が溜め息を吐く。


この言われよう……なんだか居たたまれない。　
< 8 / 199 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop