惚れ薬で、君の恋の魔法に。



「乃依(のい)」

低く掠れた、彼の声。

鼓膜が揺さぶられる度、心地よい風を感じたような気分になる。



「体調はどうだ?」

「もうよくなったよ。ありがとう」



半月前の放課後。校舎内をふらふらしていたら、初めて目にかかった教室――第2理科室。

なんとなく、出来心で入ってみたら……彼がいた。

『入部希望か?名前は?』

その問いにフルネームで自己紹介をすると、いきなり『乃依』って呼びすて。

いきなり距離近いなって。変なヤツだなって。

最初はその程度だった。



それから、放課後に毎日第2理科室に通うようになったのも、興味本位。

【化学部】

なにをするのかなと気になったんだ。

入部はお断りしたけれど、見学はし続けた。

どんなことが出来るのかなって、どうしても気になってしまって。
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