初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
新年を迎えた桜川家は人の出入りが多く賑わっていた。

お義父さまとお義母さまは欠席だから、私たちが家の代表とも言えるのでしっかりしなくてはならない。

柊哉さんと一緒に、お祖父さまをはじめとした親族に挨拶をして回した。

中にはあからさまに冷たい人もいた。私が疎まれているのか、柊哉さんのお父様の問題で冷ややかな対応になっているのか分からないけれど、どんな態度を取られても笑顔で応対するよう努めた。

本家はとにかく広い。挨拶時には一部屋に集まっていたけれど、段々と庭や、隣室に別れて談笑するようになっていた。

観察していると、近い親族から遠縁と大勢いる人々の中にも親しいグループのようなものがあるようだった。

私たちの所には挨拶以外で近寄る人はいなかった。

しばらくすると柊哉さんがお祖父さまに呼び出された。

その間、私はひとりで、初めに着席した場所から動かずに待っていることにしたのだけれど、相変わらず周囲に人はいなくて孤立している。

気まずさを感じていると、声をかけられた。

「柊哉の奥さんですか?」

柊哉さんと同年代か少し上くらいの、柔和な顔立ちの男性だった。

上質なグレーのスーツがよく似合っている好印象の人だけれど、私は初対面の相手。

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