初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「はい、香子と申します。よろしくお願い致します」
柊哉さんの遠縁だろうか。
「俺は高良仁です。柊哉と従弟同士になります」
高良さんはにこやかに名乗ると、自然な動作で私の隣に座った。
「柊哉はどうしたんですか?」
「先ほど、お祖父さまに呼ばれて別室に行きました」
「そうですか。香子さん、ひとりで心細いでしょう」
「いいえ、大丈夫です」
確かに柊哉さんがいなくて緊張していたけれど、結婚した以上は、こういった状況にも慣れる日必要がある。寂しいなんて弱音は吐けない。
「柊哉とは上手く生活出来てる? 困っていることはない?」
高良さんは気さくな性格なのか、次々と話しかけて来る。
もしかしたらぽつんと独りでいた私を気遣ってくれている?
ありがたく思いながら返事をする。
「はい仲良く暮らせていると思います」
高良さんの声音が明るくなった。
「それは良かった。柊哉はかなりの野心家だから、奥さんになる人は大変だろうなって心配していたんだ」
野心家と言うのは、柊哉さんの目標“桜川都市開発の後継者になる”ことを指しているのだろうか。
なんと答えようかと迷っていると、高良さんは誤解してしまったようだ。