初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「あれ、聞いてない? 柊哉は会社を継ぎたいと宣言してるんだよ。桐ケ谷家との結婚の話が出たときも迷いなく立候補してたしね。結婚を即決なんて相当の野心がないと無理だろう?」

「……あの、どういう意味でしょうか?」

高良さんの口から流れるように出る言葉は初めて聞く情報で、私はかなり困惑していた。

「もしかして聞いてない?」

高良さんは驚いた様子だった。

「はい……」

だって桐ケ谷家への援助は、柊哉さんのお祖父さまが恩返しの気持ちで決まったこと。
結婚は、援助しやすいよう親族になる為だって、昨日聞いたばかりなのに。

だけど今の話の流れだと、私との結婚には桜川家の後継問題が絡んでいたということ? 柊哉さんはその為に複数いた候補の中から積極的に立候補したの?

私達の出会いってそういう事情だったの?


「そうだったんだ。てっきり知っているのかと……余計な発言をして申し訳ない」

気まずそうな声に、私は慌てて首を振る。

「いえ、政略結婚なので、いろいろな事情と条件があるのは分かっていますから……詳細を知らなかっただけです」

本心とは裏腹に微笑み告げる。高良さんは私の言葉を真に受けてくれたようで、ほっとしたように息を零した。

「そう。それなら良かったけど」

それからは、話題を変えて桜川家の親類について教えて貰いながら時間を過ごした。
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