初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「そろそろ失礼しようかな。柊哉もいい加減戻って来るだろうし」

高良さんが時計を確認して呟く。

「そうですね……ありがとうございます。いろいろ教えて下さって」

役に立つ情報も得られたし、一人で過ごす寂しさも感じなかった。

「いや、いいんだよ。俺の方こそ変な話をしちゃってごめんね」

「大丈夫です。気にしてませんから」

高良さんは頷き、少し考えるようにしてから口を開いた。

「柊哉は野心はあるけど、誠実ではあるから安心して。香子さんとの結婚が決まって、女性関係も清算したって聞いているし」

「え、女性関係?……柊哉さん彼女が居たんですか?」

「まあ、でも過去の話だよ。香子さんと被っていないから」

高良さんは、いかに柊哉さんがけじめをつけたかを語り、私を安心させようとしているのだと思う。だけど私としては複雑だった。

過去とはいえ、柊哉さんの女性関係は気になる。知らなかったら平気でも一度知ってしまったら無かったことには出来ない。

「あの、どんな女性だったんですか?」

こんな話を高良さんに聞くのは良くないと分かっている。でも知りたい欲求が勝ってしまった。

「俺も詳しくは知らないんだ。親族間で話題になっただけだから……柊哉の家は何かと話に上るからね。確か名前は“ふうか”さんって言ってたかな」

「ふうかさん……」
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