初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
私のちょっと固い感じの名前と違い、可愛らしいイメージ。

見えない元恋人と比べても仕方がないのに、つい余計な考えが浮かぶ。

高良さんは予定があるのか、別の人たちと軽く会話をしたあと、帰って行った。

彼の後ろ姿を見送ったあとも、モヤモヤとした気持ちは消えないまま。



それから少しして柊哉さんが戻って来た。

彼は焦ったような表情で「ごめん」と言いながら私の顔を覗きこむ。

「話が長引いてしまったけど、大丈夫だったか?」

その様子から私を心配して、気遣ってくれている気持ちが伝わって来た。

「大丈夫。親戚の方と話をしていたから」

「そうか。良かった」

ほっとしたように笑う柊哉さん。

優しい眼差しをを受け止めたら、私の心も明るく軽くなっていくようだった。

彼につられるように、自然と顔が綻ぶ。柊哉さんが側にいると嬉しくなってつい顔に出てしまうのだ。


確かに高良さんから聞いた内容はショックだった。

結婚の経緯も、過去の恋人についても。それは仕方ないのだと頭で分かっていても、感情はまた別だから。

でも、経緯はどうであれ、今の柊哉さんは私をちゃんと見ていてくれる。

私も柊哉さんと居るとき、幸せを感じている……この気持ちを無くしたくない。

だから惑わされないでこれからのことだけを考えるようにしなくちゃ。

私たち夫婦はきっと上手くやっていける。そう前向きに考えられるような気がしていた。

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