初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
簡単に机周りを整理して、PCを立ち上げる。

まだ休み気分が抜けないけど、てきぱき動かないと残業になってしまう。

気持ちを切り替えて仕事に集中する。



「……桐ケ谷さん」

一時間位過ぎた頃、小林さんに呼びかけられた。

「どうしたの?」

「これ見てください」

彼女が手にしていたのは社内報だった。

二か月に一度、本社広報部から発行される冊子で、社内のイベントやその時々のニュースが載っている。

正社員全員に配られるが、熟読する人は少なく、だいたいがさっと目を通す程度。特に小林さんは関心が無さそうにしていたものだ。

「社内報読むなんて珍しいね」

「池田さんから引き継いだ資料に入ってたんです」

「え?」

引継ぎ資料の中に、どうして社内報が?

「その一冊だけ?」

「はい。見てみたら池田さんが入社したときのものでした。だからこの一冊だけ別に保管していたんでしょうね」

毎年新入社員の入社時期に、“今年の新人”と題した特集が組まれる。

新入社員の顔写真と簡単なプロフィール。メッセージなどが載っており、本人にとっては記念の一冊と言えるものだ。
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