初夜から始まる夫婦事情～一途な次期社長の溺愛は鎮まらない～

今まで柊哉さんは一人暮らしをしていたと思い込んでいたけれど、もしかしたら違うかもしれない。

恋人と……池田さんと同棲していた可能性だってあるんだ。

三十歳の地位と実力のある見栄えの良い男性に、恋人がいない方が不自然だもの。


柊哉さんと池田さんがキッチンに並んで立ち、仲良く料理をする姿が浮かんで来て途端に気持ちが沈んだ。

私、いつからこんなに想像力豊かになったの？

余計な想像ばかりしていないで、早く料理の続きをしなくては。

そう気持ちを切り替え、集中していたつもりだった。

でも駄目だったようだ。

トマトパスタ用のベーコンを切ろうとした時、うっかり包丁で指を傷つけてしまった。


「いたい！」

反射的に悲鳴を上げると、柊哉さんの視線が直ぐにこちらに向くのが視界の端に映った。

その僅かな間にも指先からは血が溢れ出す。

かなりの量に見えて慌てていると、柊哉さんが私の手を掴み、傷口を水道水で流し始めた。