初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
何から何まで面倒を見て貰い無事に診療を終えた私は、ようやくほっとして身体の力を抜いた。

指先はぐるぐるの包帯で膨れている。

これじゃあ仕事がし辛いだろうな……自分が悪いから仕方がないけど。

「酷く痛むか?」

指先を眺めながら溜息をついていると、会計を済ませた柊哉さんが戻って来た。

「大丈夫。心配かけてごめんなさい」

「気にするな」

柊哉さんに促され、病院に隣接している調剤薬局へ移動する。

「柊哉さんが居てくれて良かった。ひとりだったらパニックになってたかも」

応急処置の手際の良さもさることながら、病院に行くかの判断や、行動力もさすがだった。

私なんてこの病院の診療科目すら知らなかったのだし。

「怪我は残念だったが、一緒の時で良かったよ」

柊哉さんはそう言うと、顔を曇らせた。

「会社で何か有ったのか?」

「え、どうして?」

「指を傷つける前から、なんとなく様子がおかしいと思ってたんだ」

彼の鋭さに驚いた。あんな短い時間で、どうして分るの?

それだけ私を見てくれているということ? 私を気にしてくれている?

そうだとしたら……正直にこのモヤモとした胸の内を打ちあけてみようかな。

池田さんと付き合っていたか聞いてもいい?
今、彼女をどう想っているのかも……。



気持ちが揺れながらも、私は結局口には出来なかった。
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