初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
これが終わってもまだ仕事は終わらない。
もう少し時間に余裕のある、ビル管理部門の長期派遣スタッフの採用面接のスケジュールを組まなくては。それに、プロパー社員の勤怠集計もある。
やるべきことが山積みで内心慌ててしまう。
時間はあっという間に過ぎていくというのに。
「桐ケ谷、それどうしたんだ?」
集中していても自分の名前には反応出来るみたいで、私は直ぐにパソコンの画面から視線を上げた。
「進藤君……」
連休が有ったせいか、懐かしい気分になった。つい「久しぶり」なんて言いそうになる。
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ。ところでその指はどうしたんだ?」
彼はキーボートに沿えたままの私の指に目を向けて眉を顰める。
「ああ、これは……」
「料理中に切っちゃったみたいですよ。桐ケ谷さん意外にうっかりなところありますよね」
答えようとするより先に、小林さんが割って入った。
「料理中って、包丁で切ったのか?」
進藤君はまるで自分が切ったかのように、顔をしかめる。
「うん。ちょっとぼんやりしてたみたい。でも大したことないんだ」
「結構包帯巻かれてるけど」
「まあ……それより何か有ったの?」
近々取締役が出席する経営戦略会議があると聞いているし、忙しいんじゃないのかな?
「これ持って来た」
言葉と共に私の机に、紙袋が置かれる。この状況は二度目だ。もしかして……。