初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「お土産?」

「そう。桐ケ谷が好きだって言ってたの思い出してさ」

確かに紙袋の中身は、私の好きな九州の銘菓。東京でも購入可能だけれど、扱う店はまだ少ない。。
通販もなくなかなか手に入れる機会がないから、正直嬉しい。

でもこのお菓子は高級品で同僚へのお土産に相応しくない。それに、私が好きだってことをなぜ彼が知っているのだろう。そんな会話をした覚えはないのに。

「気持ちはありがたいけど……」

「遠慮しないで受け取って。帰省したついでに買っただけだから」

「え、進藤君って九州出身だったの?」

意外に思い目を丸くすると、彼はがくりと項垂れた。

「同期だってのにひでえ……桐ケ谷は本当に俺に関心が無いよな」

「そ、そんなことないけど」

同期と言っても親しくなかったから、プライベートについて知らなかっただけだし。

だけど目の前で落ち込まれると、なんだか自分が冷たい人間に思えて来る。

「あの、ごめんね」

「お詫びに細かいことは言わずそれ受け取ってな」

「え……」

進藤君はけろりとして言う。もしかしてこの決着を目的に落ち込んだふりをした?

そんな疑惑が浮かんで来る。

爽やかなイメージだけど、実は腹黒いとか? いや実際新人の頃は、一見したイメージもそんな感じだったし、本性なのかも。

これ以上あれこれ言っても口では敵わなそうなので、ありがたく頂くことにする。
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