初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~

「池田さんが気になるみたいだけど、どうして?」

更に踏み込んだ質問をされ、答えに詰まった。だけど確信する。真田課長は間違いなく私の心情を見抜いている。

だったら……。

「池田さんは柊哉さんと真田課長と同期だそうですね。先日知ってから少し気になっています」

柊哉さんの元恋人について聞いたとまでは言えないけど、同期としての関係くらいなら聞いてもいいかと思い切って口にしてみた。

真田課長は大した反応は見せずに、「そうだな」と肯定する。

他に何も言ってくれないので、焦れったさを感じながら、更に質問した。

「柊哉さんと真田課長と池田さんで仲が良かったんですか? 仕事中はそんな素振り有りませんでしたけど」

「仲は良かったな。新人恒例の忘年会余興の練習で盛り上がったのを覚えているよ。あの頃は仕事帰り毎日のように集まっていた」

「そんなに……親しかったんですか」

自分で聞いたくせに、ショックを受けた。

今の柊哉さんと池田さんからは想像できない姿が、昔は有ったんだと思うと、言いようのない気持ちがこみ上げた。

「柊哉の過去がそんなに気になる?」

「いえ、そんなことは」

「誤魔化さなくていい。酷い顔をしている」

そうだとしても指摘しないで、気付いてないふりをして欲しかった。

「あの……小林さんの件はしっかり指導しますので」

何も解決せずすっきりしない状況だけれど、これ以上話していたら何を口にしてしまうか分からない。

元恋人についても黙っている自信がないし。

話題を変えて、仕事に戻ろうとした。

だけど真田課長は今度は私の気持ちを察してくれなかった。
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