初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
手早くコーヒーを用意して、パントリー近くの休憩テーブルに落ち着く。

ここはパーティションもなく人に聞かれたくない話をするのには適してないけれど、皆帰宅した今なら大丈夫そう。


「それで話ってなに?」

進藤君が、カップを口に運びながら言う。

「小林さんのことなんだけど、最近ちょっと私語が多いって指摘があるの。彼女には明日話すけど、進藤君も気にかけて貰いたいんだ」

「……俺が?」

進藤君はなぜ?と言いたげに首を傾げる。

「進藤君が総務に用があって来たとき、小林さんと結構盛り上がっているでしょ? 話があるならランチに行くとか、総務のフロア外でした方がいいんじゃないかと思う」


全然自覚が無いようだけど、このままだと彼の評価も下がりかねないんじゃないかと心配になる。

私だって本当はこんなこと言いたくないから、出来れば自分で気付いて欲しいのだけど。


「なんか勘違いしているみたいだけど、俺は小林さん目当てで総務に出入りしている訳じゃない。彼女が一方的に近づいて来るだけ」

「そうかもしれないけど」

小林さんの一方的なものだとしても、先輩としてたしなめたり、距離を置くなりしてくれたらいいのに。

「課長に注意された? 指導員としてなってないって」

まるで見ていたかのように、進藤君は言い当てる。
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