初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「さっき暗い顔をしていたのは、面倒なことになったって憂鬱だったんだろ?」
「……凄い洞察力だね」
「ちょっと考えれば分るよ。小林さんに指導するより俺の方をなんとかする方が楽だと考えた。それで珍しく誘って来たんだろ?」
進藤君の為でもあると思った。そう言おうとしたけど、やめた。
何を言っても信じて貰えそうな気がしたから。それに進藤君に言う通り、私は無意識に楽な方を選んでいたんだと思う。
自己嫌悪に陥っていると、進藤君が声を低くした。
「まあいずれ問題になるとは思ってた。彼女結構あからさまだしね」
「あからさまって」
「彼女が俺に好意を持っているのはとっくに気付いてた」
私は驚き、直ぐに言葉が出て来なかった。
だって知っていて何事もないように、総務に来ていたの?
小林さんと話しているときだって、少しも不自然な様子は見えなかった。
普通なら気まずいとか、照れるとかあるんじゃないの?
進藤君の考えが分からない。転勤して来てからの彼は、社交的で明るく交流しやすい人に変わったのだと思っていた。
だけど、平然と好意に気付いていたと言い放つ彼が、別人のように見えて来た。