初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「覚えていないのかもしれないけど、あの頃も桐ケ谷にそれとなく俺の存在をアピールしたつもりだった。でも反応が悪かったから見込みがないんだって諦めた。その内配属先が決まり会う機会もなくなったから忘れられると思ってた」

「え? じゃあ進藤君はこれまで彼女はとかいなかったの?」

「ときどきは居たよ。桐ケ谷のことは諦めたつもりだったから。でも長続きはしなかったな」

「そう……」

内心ほっとしていた。

私は彼の気持ちに応えられない。
付き合っていた女性が居たと言われる方が気が楽だ。

「今、あからさまにほっとしただろ」

進藤君がむっとしたように眉をひそめる。

「いえ、あの……」

肯定すると傷つけてしまうかもしれない。

かと言って、返事を曖昧には出来ない。
理由は言わないまま、彼を拒否しなくては……。

だけどその言葉が思いつかない。
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