初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~

柊哉さんに見られた? 

距離があるから話までは聞かれていないと思うけど、こんな所に二人きりで、更に手まで触れ合っていたのだから仕事の話ではないと察するだろう。

どうしよう……柊哉さんに誤解されたかもしれない。

そう思うと息苦しさが襲って来た。

柊哉さんに駆け寄って弁解したい気持ちでいっぱいになる。

だけど、進藤君にそんな姿は見せられない。

身動きできないでいると、柊哉さんがゆっくり近づいて来た。

彼が近づくにつれ緊張が高まる。

進藤君が椅子から立ち上がったのが横目で見えた。

彼は頭を深く下げて、柊哉さんと真田課長を迎え入れる。

「桜川専務、真田課長、お疲れさまです」

柊哉さんは軽く頷くだけだ。無表情で何を考えているのかうかがえない。

真田課長がテーブルの上にチラリと目を遣ってから言った。

「こんな時間にふたりで居るなんて珍しいな。仕事ではないようだが、何か有ったのか?」

「あ、あの……」

説明をしようとしたけれど、声にならなかった。

言い訳しようにも進藤君に告白されたなんて、柊哉さんには言えない。

だけど、手を繋いでいた言い訳なんて思いつかない。

黙ったままの私と違い、進藤君は堂々と質問に答えた。
< 132 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop