初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
十分が過ぎたので、地下に移動した。

人気はないけれど念のため、周囲を確認しながら柊哉さんの車に向かう。

彼はまだ来ていないようだったので、目立たないように柱の影で待つ。

しばらくすると、足音が聞こえて来た。

そっと覗くと、柊哉さんが足早に近づいて来るところだった。

彼は私に気付くと、目線で合図を送ってから運転席のドアに近付く。

開錠の音が響くと、私は後部座席のドアを開き車に乗り込んだ。


オフィスビルから離れても、柊哉さんは口を開かなかった。

前と後ろに別れて座っていることで、ただでさえ気まずい状況が悪化しているみたい。

私から話しかけなくちゃと思っても、上手く言葉が見つからなかった。

でもいつまでも無言で居るわけにはいかない。

「柊哉さん」

勇気をかけて声をかけると、予想していたより穏やかな声が返って来た。
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