初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「どうした?」
私はほっとして、やや身を乗り出すようにした。
「さの、さっきの……進藤君と話していたことの説明がしたくて……」
「……少し待ってくれるか? もう少ししたら車を停めるから」
「はい」
柊哉さんの言う通り、隣同士の方が話はしやすい。
程なく、交通の少ない道路の路肩に車が停まったので、助手席に移動した。
「柊哉さん、さっきはごめんなさい」
開口一番に謝れば、柊哉さんは複雑そうな表情を浮かべた。
怒っているのか、呆れているのか、それとも何とも思っていないのか、判断がつかなかったけれど、少しの間を置いたあとに柊哉さんが口を開いた。
「謝らなくていい。怒っていないから」
「……本当に?」
あのとき、柊哉さんの目が怖かったように感じたのは、私の気のせいだった?
焦ってしまって勘違いしていたのかな?
ほっとしたけれど、手放しで喜べない。あんな状況に居合わせて何も感じないなんて、どうでもいい存在と思われているようで寂しさを感じる。
誤解されているのが不安だと思っていたのに、気に留められないと知り嫌だと思うなんて我儘すぎる。そうは思っていても、胸に燻るモヤモヤは消えない。