初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
食事中の柊哉さんの態度は、普段となんら変わらなかった。

会社でのことなんて何もなかったかのように会話を交わし、美味しい料理を楽しんだ。

マンションに帰り自分の部屋で着替えをしてから、スマートフォンを確認する。

着信は二件。紫穂と進藤君から。

メッセージも送られて来ていた。

紫穂からは食事の誘い。進藤君からは、途中になった話の続きをしたいから会いたいと書かれていた。

……どうしよう。

確かに中途半端なまま話が終わっている。内容は真剣に向き合わなくてはならないもの。

だけど、進藤君に会って、それを柊哉さんに知られたら?

回りから誤解をされるような行動は慎めと釘を差されたばかりだ。

かと言って、会社で話せる内容じゃないし……。

悩んだ末、結局私は直接会うのを避ける選択をした。

『ごめんなさい。さっきは言えなかったけど、付き合っている人がいます。だから二人で会ったりはできません』

こんな大事なことをメッセージで送るなんて酷いと思う。

だけど、これが一番いいと思った。

柊哉さんとの約束を守り、進藤君に思わせぶりな態度を取らないようにする。それが今私が取るべき態度なのだと。

それでも送信後しばらくは気分が沈んだ。
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