初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
長めのブラウンヘアが、陶器のように滑らかな額を覆っている。
整った顔立ち。目付きは少し険しいけれど、凄い美形だ。美女の紫穂と並んでいても全く引けをとらない。
誰?……この人。
立ち尽くしていると、紫穂が気付き手招きした。
「香子、何してるの」
「邪魔したら悪いかと思って」
だってふたりの距離は明らかに友人の範囲を超えている。
隣に並んでいると言うより、ぴったりと寄り添っているよね?
「何言ってるの。彼を紹介すから」
その後、ご機嫌の紫穂に男性を紹介して貰った。
最近彼女の実家の飲食店に来た業界では有名なシェフらしく、最近付き合い始めたそう。
私を紹介したくて連れて来たとのことで、紹介が終わると直ぐに帰って行った。
あまり愛想がよいとは思えないけど、紫穂を見る目は優しかった気がする。
「紫穂幸せそう。良かったね」
「ありがとう。最初は嫌な奴って思ったんだけど、いつの間にかね」
「結婚するの?」
「どうだろ? あの人結婚願望なさそうだし」
そう言いつつ、紫穂は嬉しそうにしていた。きっと結婚を考えているんだろう。
なかなか好きになれる相手がいなくて、美人なのに独り身生活が長かった紫穂。幸せになって私も友人として嬉しい。
「香子こそどうなの? 相変わらず幸せいっぱい?」
「……まあまあかな」
紫穂に相談したいと思っていたけど、幸せそうな姿を見たら言い出せなくなった。
今日はこのまま楽しい話だけして過ごした方がいいよね。だけど紫穂は鋭かった。