初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~

「嘘だね。何か悩みがあるでしょ?」

「なんで?」

「顔。醸し出す空気」

「……それか」

私って本当に駄目だ。隠そうとしてもみんなに見抜かれてしまう。

柊哉さんにも、進藤君にも紫穂にも。

それなのに私は柊哉さんの気持ちが分からない。進藤君の気持ちだってずっと気付いていなかった。

「“それか”ってどうしたの? 柊哉さんに何か言われた?」


「何も言われてない。言われなすぎで寂しい」

「どういう意味?」

綺麗な形の眉を顰めて、紫穂が言う。

「私たちの関係ってやっぱり普通じゃないのかなって思って。自分では恋愛している気でいたの。上手くやっていたつもりだった。でも柊哉さんは私に感心が無いのかもしれない」

進藤君のことを追求もして来なかったし、それからも気にした様子がなかった。

私は池田風花さんの存在が気になって仕方ないのに、柊哉さんはいつも余裕な態度で、微笑みを崩さない。

前に気持ちを伝えたとき、柊哉さんも私のこと好きだって言ってくれたけど……本当に好きだったら嫉妬するんじゃないのかな?

政略婚の私たちの関係は他の人とは違う。

自然と好きになったのではなく、初めから“この人があなたの相手です”と決められていた。

無意識にでも上手くやって行かなくては、好きにならなくてはと思っていたはず。

でも、もし……例えばただの同僚として知り合っていたら?

私たちは恋に落ちたのかな?

そう考えたとき、今の夫婦関係が、とても底の浅いもののように感じて不安になった。

私は本当に、柊哉さんに愛されているの?
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