初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「私が感じていたのって本当の幸せだったのかな」

柊哉さんの側にいるだけで嬉しくて、抱き合えば愛しい気持ちでいっぱいになった。

その気持ちは恋だと信じていたけれど、でも……。

「ねえ、何でそんなに難しく考えてるのか分からないけど、香子は柊哉さんが好きなんでしょう? だったら出会いが何だろうといいじゃない。結婚した後、どう関係を築いて行くかの方が大事だと思うけど」

「でも、柊哉さんには恋人が居たの。私と結婚するために別れたって聞いた」

「まともな対応じゃない。結婚後も他の女に手を出す男よりよっぽどいいわ。それとも香子は三十にもなって恋愛経験なしの男じゃないと駄目だって言うの?」

「そうは言ってないけど」

柊哉さんのような大人の男性に、過去恋人が居たのは普通で、仕方のないこと。

私だって、理解の上、結婚した。

「柊哉さんが相手の女性に気持ちを残したまま別れたのだとしたら嫌だなって考えちゃうの。その相手はね、私の先輩社員で柊哉さんの同期。入籍した頃に退職したの」

「え……知ってる相手なんだ。それは気になるね」

紫穂は少し驚いたようだった。手にしていたグラスをテーブルに置き何か考え込む。
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