初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「悩んでたのはその件よね。柊哉さんに直接聞いたの?」

「ううん、聞けなくて」

「そっか。それなら“言われなすぎで寂しい”ってのは?」

「この前ね、他の男の人と二人きりでいるところを偶然見られたの。変に誤解されてもおかしくない状況だった。それなのに柊哉さんは平然としていた。私は彼の過去をこんなに気にして不安になってるのに、柊哉さんはどうでもいいんだって思ったら、なんか凹んじゃって」

紫穂はうーんと腕を組む。

「それは誤解だって分かってるからじゃない。私だって香子が浮気するなんて思わないもの。信用されてるんじゃないの?」

「そうかな? 嫉妬って信用していても、勝手にこみ上げるものだと思うけど。私がそうだし」

柊哉さんはいい加減な気持ちで女性と遊んだりなんてしない。

それはこの数か月一緒に過ごして分かってる。だからこそ、前の恋人を本当に愛していたんじゃないかと心配になる。

「まあそうかもしれないけど……今までの香子の話を聞く限り、ふたりは凄く上手く行ってると思ったんだけどね」

「私もそう思ってた。いろいろ知る前は」

はあと溜息を吐くと、紫穂が何か思いついたように手を叩いた。

< 153 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop