初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「ねえ、実は嫉妬してるけど隠しているんじゃない? あの地位に就いてるなら感情を隠すのは得意そうだし、香子が気付いてないだけかもよ」

柊哉さんの様子を思い浮かべた。

穏やかな笑顔、落ち着いた物腰。ソファーにゆったり座りタブレットを確認する姿からは、余裕と自信を感じる。

料理の味付けを失敗してしまった日が有った。でも彼は塩辛いお味噌汁を「大丈夫だ」と平然と飲んでいたっけ。本当はまずかったはずなのに。

紫穂の言う通り、柊哉さんは感情を表に出さない技を会得していそうだ、でも……。

「それは無いと思う」

どう考えても私のことで嫉妬しているとは思えない。悲しいけど。

うじうじしている私にイライラしたのか、今度は紫穂が大きな溜息を吐いた。

「もう。これじゃあ、きりがないじゃない。そんなに悩むならはっきり聞きなよ。私だったら直ぐに話し合うと思う」

「紫穂なら言えるんだろうけど」

「香子が言い辛いのは分るけど、気になることを放っておいたら、本当に仲の良い夫婦になれないんじゃない? 黙ってたら何も伝わらないと思わないの?」

その言葉にはっとした。

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