初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
余裕のない男 柊哉side
香子のいない家に帰る気にはなれずに、いきつけのバーに足を運ぶと先客がいた。
「来てたのか」
「お疲れ」
カウンター席にいた真田は、自分のグラスを持ち俺の後に付いて奥の席に移動する。
ソファーに座り上着を脱ぐなり、遠慮ない質問を投げかけられた。
「奥さんとは仲直りしたのか?」
「そもそも喧嘩をしていない」
じろりと睨みながら答えると、真田は大げさに肩をすくめた。
「あの日のお前相当機嫌悪くなってたけどな。彼女に何も聞かなかったのか?」
「聞いた。新入社員の件で進藤に相談していたと言われた。お前が注意をしたんだろ? もう解決したそうだ」
「え? お前その言い訳信じたのか?」
残念そうな眼差しを向けられ、ムカムカとする。
今夜は、たくさん飲んでしまいそうだ。
酔えば少しは気分が良くなるかもしれない。
運ばれて来た酒をグイッと煽ったが、全く酔えなかった。
真田に言われなくたって、香子が肝心なことを言っていないのは気付いている。