初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「進藤が海外勤務の希望を出した」

「それで?」

聞きたい内容から反れている。真田も分かっているはずなのに、のんびりと続きを口にする。

「進藤は元々海外行きの候補だったし、あと二年もすれば移動になるだろう。桐ケ谷さんはあと二ヶ月程で退職だ。ふたりが上手くいくことは無いよ。心配するな」

「心配なんてしてない。俺は香子が裏切るとは思ってないからな」

「そう言うわりに、ものすごく不機嫌そうだけどな」

真田に指摘されたが、本当に不貞などは疑っていない。

香子は気軽に男と付き合えるタイプではない。それは知り合ってからの日々で分かっていた。
では何が不快なのか……。

あのふたりの関係だ。進藤は自分よりも何年も先に香子と出会い、恐らく好意を持った。

新入社員研修では同じ空間で同じ教育を受けたはずだ。

自分が知らない香子を知り、絆がある。

そう考えると嫉妬心が抑えられなかった。

香子は進藤をどう想っているのだろう。もしあいつの気持ちに気付いたら、どんな反応をするのだろう。きっぱりと突き放せるのだろうか。

いや、そんなことは問題じゃない。実際行動に出るかではなく、少しでも心が動いたら嫌なのだ。
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