初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「彼女、ショックを受けていたな。隠しているつもりみたいだけど、分かりやすいから」

「やはり言うべきじゃなかった」

「それに、柊哉と話し合うきっかけになればと思ったんだよ。実際彼女にもそんなに気になるなら本人に直接聞くよう言った。もっと信用して心を開いたらって」

真田の言葉が突き刺さった。

「香子は俺に心を開いていないって言いたいのか?」

「開いてる面もあるだろうが、肝心なことを聞けないでいるのは問題だろ? でも未だ話合えてないとは予想外だったよ。彼女が言い出せなくてもお前が察して話しやすい状況を作るだろうなと思っていたから。それなのにお前って……」

真田は揶揄うようにニヤリと笑う。
言葉は濁しているが、不甲斐ないとでも言いたいのだろう。
不快だったが、実際その通りなので黙って酒を煽る。

「なあ、自棄にはなるなよ?」

「なってない。覚悟を決めようとしてるだけだ」

「覚悟って、大げさだな」

「笑いたければ笑え」

どう思われたって構わない。それよりも香子と向き合わなくては。

望まない結果になったとしたら……いや今は考えてはだめだ。

「なあ、風花があんな風になったことで責任を感じてるのか? そうだとしたら間違ってる。お前は何も悪くないよ。彼女の心の問題だ。一緒にいた俺が言うんだから間違いない」

「そんな風に割り切れない。俺にも悪いところは有った。それに最終的には彼女を切り捨てるような形になった」

「切る捨てるって言うのは違うだろ? 風花は仕事は辞めたけど、大きな代価を得た。今は新しい会社でやり直してるさ。お前が寛容だったおかげで好きなことだって何でもできるだろ? 」

真田の言うことがおそらく正しい。

それでも不安だった。

俺の所業を知った香子がどう思うかが。


それでも逃げてはいけないと、分かっている。

「上手くいくことを祈ってるよ」

真田の励ましに頷いた。


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