初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
土曜日。私は早めに起きてシャワーを浴びた。
頭をすっきりして綺麗に身支度をしておきたかったから。
自分の夫と話し合うのに、こんな風に気合を入れるなんておかしいかもしれない。
だけど私にとっては勇気のいること。
今日、失恋してしまうかもしれないのだ。
柊哉さんが私と結婚したのは、会社を継ぐ望みを叶える為だから離婚にならないのは分かってる。
でも、たとえ結婚生活が続いたとしても、彼の気持ちが他の人に向いているのなら、私にとっては失恋だ。
私が知らないふりをしていれば、穏やかな暮らしは続いていく。
でも、もうこれ以上は幸せなふりは出来ない。妥協して生きてはいけない。初めてそう思ったのだ。
コーヒーを淹れていると、柊哉さんも起きて来た。
彼は手早くシャワーを浴びて、リビングのソファーに腰かける。いつもの私は迷わず隣に座るけど匡ははす向かいの一人がけの席に着席した。
「すぐに話すか?」
柊哉さんは私の申し入れをしっかり覚えてくれていたようだ。
重い話になると勘づいているようで、どこか気まずそう。
それでも白いシャツを無造作に着る彼は今日も輝いて見えた。
私の大好きな旦那様。
今、しみじみと実感した。自分で選んだ訳じゃない決められた相手だったかもしれないけど、それでも私は柊哉さんが好きだ。
きっとただの同僚として出会っていても、彼を知る機会が有れば好きになっていただろう。
だって見つめ合っているだけで、こんなに胸が締め付けられる。
「……私、柊哉さんに聞きたいことがあるの」