初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「まだ続きがある。断ったあと、池田さんの様子がおかしくなった。明るさは消えヒステリーな性格になった。また俺の家に押し掛けるようにもなった」

「そんな……」

失恋のショックで、おかしくなってしまったということ?

私が総務部に配属になった頃、池田さんに明るさはなかった。

いつも一人でいたし、口数も少なかった。あの頃、既に柊哉さんともめていたからなんだ。

「池田さんの行動がエスカレートして、ついに両親や親族にも知られることになった……以前、俺の父親について話しただろう? 親族間で元々低かったうちの評価は地に落ちた。祖父にもきつく叱責された。俺の曖昧な態度も悪いと」

「曖昧って?」

「迷惑行為にしっかりと対応しなかったこと。自分ひとりで話し合いで解決しようとしたからだ。その対応が正しくないとは分かっていたが、友人だと思っていた彼女に代理人なんて使いたくなかった。俺の態度が招いた事態だったからなお更」

「……そうだよね」

それまで仲良くしていた相手を、無情に切るなんて柊哉さんには出来ないだろう。

彼を情のない経営者なんて言う人もいるみたいだけれど、それは違う。

柊哉さんは優しい人だもの。そう分かっていたはずなのに私は……。
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