初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「え……柊哉さん、家事するんですか?」

意外だった。家のことをする暇なんてない人だと思っていたから。

彼は苦笑いになった。

「一人暮らしだったから、最低限のことはできる」

「あ、そうでしたね」

柊哉さんはつい先日までは、もっと会社近くのマンションで暮らしていた。

「一人暮らしは長かったんですか?」

「ああ、五年以上だ」

「そうなんですか。でも実家も通勤に便利な所にあるのに、どうして出たんですか?」

柊哉さんの実家、桜川家には一度だけ訪問した。

都内の閑静な住宅街の中に建つ日本家屋の家だった。充分プライベートを保てる広さがあり、わざわざ一人暮らしをする必要を感じない。

「いい年して実家に居づらかったんだ」

柊哉さんはそう言うと私をダイニングルームに促した。曖昧な返事なのは詳しい事情を話したくないから?

彼のことをもっと知りたいと思っているから、ついいろいろ聞いてしまうけど、あまりしつこくしない方がいいかもしれない。誰にだって踏み込まれたくないところは有るのだから。

< 17 / 182 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop