初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
「ごめんなさい」

「香子?」

「柊哉さんの優しさと誠実さを分かっていたはずなのに、私信じることが出来なかった。柊哉さんは本当は池田さんが好きで、私とは会社を継ぐ為に本心を隠して結婚したんだって疑っていたの」

項垂れて言うと、柊哉さんの顔色が変わった。

今度こそ怒らせてしまったんだ。

「柊哉さん、私に幻滅したでしょう?」

「違う……香子が疑っていた通り、俺は酷い人間なんだよ」

「え? どういう……」

「香子との結婚の話が出たとき、池田さんと最後の話し合いをした。結婚が決まりそうだから、けりをつけたいと」

私はかなり動揺した。

「池田さんは私が相手だって知っていたの?」

「相手については聞かれたが言わなかった。知れば彼女が香子に何をするか分からないからだ。俺は彼女に頼んだんだ。会社を辞めて欲しいと」

私は思わず目を瞠った。

池田さんの退職が、まさか柊哉さんの思惑だったとは……信じられない。
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