初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
うそ、信じられない……私は都合の良い夢でも見ているの?

柊哉さんがこんなに必死に、私を必要だと言ってくれるなんて。

じわりと涙が滲んでくる。すると柊哉さんは慌てて席を立ち私の側にやって来た。

ソファーの隣に膝とつき「大丈夫か?」と心配そうにする。

私は彼を見つめながら訴える。

「柊哉さんは私に感心がないんだと思ってた。好きなのは私ばかりなんだって」

「そんなことある訳ないだろ?」

「だって、私は池田さんのことで不安でいっぱいだったのに、柊哉さんは私が進藤君と居ても気にもしてなかったでしょ? どうでもいいんだって感じて寂しかった」

条件ありきで作られた関係は、少しずつ積み上げた純粋な気持ちに勝てないのだと思った。

「あれは……」

柊哉さんが突然、口ごもる。けれど吹っ切れたように早口で告げた。

「おかしくなるくらい嫉妬してた。でも香子にそんな姿を見られたくなくて平気なふりをしたんだ」

「うそ……」

おかしくなるくらい嫉妬するなんて、まさか……。

「嘘じゃない。俺は自分で思っていたよりもずっと嫉妬深かった。あの日進藤とは何をしていたんだ? 仕事の話じゃないんだろう?」

柊哉さんが私の手を掴む。鋭く見つめて来る瞳を見て、ようやく気付いた。

進藤君のことで、嫉妬してくれていたんだ。彼だって私と一緒だったんだ。

「前から好きだって言われたけど、進藤君は私に相手がいるのを知っていたの。だから何もないよ。これからは同僚としてよろしくって言ってくれたから」

「……そうか」

柊哉さんが小さな息を吐く。今どういう気持ちなのだろう。安心した? それともまだ怒っている?

分からない……でも。

私は目の高さを合わせてくれている彼に、抱き着いた。両手を首の後ろに回し身体を寄せる。

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