初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
柊哉さんとの結婚について、進藤君にだけは自分から話そうと決心した。

わざわざ言う必要もないかと迷ったけれど、後から知らされるよりいいと思ったから。

居酒屋の裏の人気のない場所で立ち止まる。

「何か有ったのか?」

進藤君が怪訝な顔をしている。

「ごめんね、こんな所に来て貰って。私の退職理由を伝えようと思ったから、他の人に聞かれたくなくて」

進藤君は僅かに目を瞠る。

「もしかして、辞めるのは結婚するから?」

「うん」

「どうしてみんなに言わないんだ? 結婚で退職の方が祝って貰えて良くないか?……って言うか、桐ケ谷の相手はうちの会社の社員だよな?……公表出来ないような相手ってこと?」

相変らず彼は察しがいい。

「そうなの。いずれしられるとは思うけど、私からは言い辛くて。でも進藤君には自分の口で言った方がいいと思ったの」

「ああ……ありがとう。確かにあとで皆と一緒に、桐ケ谷が結婚しました。なんて教えられたら凹んだかも。それで相手は俺の知ってるやつ?」

進藤君は興味津々といった様子だ。

「当分誰にも言わないでよ」

「分かってるって」

「……桜川柊哉さん」
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