初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
柊哉さんの名前を出した瞬間、進藤君の口がぽかんと開く。

数秒後彼は「はあっ?」と大声を上げた。

「嘘だろ? 何で桐ケ谷と専務が?」

「進藤君、声が大きい! いろいろあってそうなったの」

彼は慌てて口を押え、それから声を潜めて囁く。

「俺以外に知ってるのは?」

「真田課長」

「そっか……専務か……あーあの人には敵わないよな。俺振られて当然だな」

「当然なんてことないよ」

進藤君は「どうだか」と疑わしそうに私を見る。けれど突然深刻そうな表情になった。

「やばい。桐ケ谷の手を握ったところ、専務に見られた」

「あ、それは大丈夫だよ」

「怒ってないのか?」

「そんなことで怒らないよ」

本当は凄く嫌だったと言っていたけど、今後の人間関係のため、進藤君には否定しておく。
あんなことは二度とないだろうし。
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