初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
月日は流れ六月。
結婚式を数日後に控えた私と柊哉さんは、彼の実家を訪れた。
不在がちなお義父様が家にいると言うので、挨拶と近況報告をする為だ。
気分が安定しないときがあるお義母様も、お義父様がいるせいか明るい表情だった。
特殊な環境の為、私がふたりに会うのは、まだ三度目。かなり緊張する。
更に、通された応接間にはなぜか柊哉さんのお祖父様である桜川達吉さんまでが居た。
私たちの結婚を進めた、桜川家の最高権力者の登場に、私はすっかり固くなっていた。
そんな私に、緊張感のないのんびりした声がかけられる。
「香子ちゃん、久しぶりだね。柊哉が失礼なことをしていないか?」
「はい、お義祖父様。とてもよくして頂いています」
「桐ケ谷のご両親は元気?」
「はい。お気遣いありがとうございます」
お義祖父様は私には気さくで優しい。
それなのになぜ固くなるかと言えば、柊哉さんが緊迫感を出すからだ。警戒心ともいえるかも。
「柊哉、結婚式の準備は進んでるのか?」
お義祖父様も柊哉さんには、口調からして厳しい。
「はい、滞りなく」
「香子ちゃん任せにしているなら、許さないぞ」
「ふたりで話し合っていますので、心配無用です」
なんだか、会話が冷え冷えしているのだ。
柊哉さんはご両親に対しても、距離を置いているところがあるし……殺伐とした雰囲気が心配になる。
気まずいながら凄い一時間が経った頃、お義母様が私室に引き上げた。
お祖父様の命令で、お義父様も後を追う。
応接間には私と柊哉さんとお義祖父様の三人になった。