初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
実家を出て、車に乗り込むとようやくほっと一息つけた。

「緊張した」

「大丈夫か?」

「うん、柊哉さんこそ大丈夫? お義祖父様があんな風に話を変えて来るなんて」

「あれは恐らく試したんだろう」

柊哉さんがさらりと言う。精神的にダメージを受けている様子は見られない。

「試すってなにを?」

「俺の香子への気持ちだ。祖父は俺が後継の地位目当てで結婚したのを誰よりも知っている。そんな俺が恩人の孫娘を大切にするかどうか、見極めたかったんだ」

「柊哉さんはその意図に気付いたから、ああ答えたの?」

柊哉さんはハンドルを握ろうとしていた手を止め、私の頭を優しく撫でた。

「気付いてたけど、言ったのは本心。俺の一番の望みは変わったんだ。譲れないものも出来た……だからこの先後継になれないかもしれない。それでも香子は付いて来てくれるか?」

柊哉さんの手が滑り、頬に触れる。

私は彼をまっすぐ見つめて答えた。

「ついていくに決まってる。私はずっと柊哉さんの側にいるから」

私も同じ想いだから。一番の望みは柊哉さんと共に生きること。

政略結婚だった私達だけど、確かに恋をして、愛情を育んだ。

それはかけがえない絆なのだから。

柊哉さんが愛しさをにじませる目で見つめ返してくれる。


どちらともなく近づき、キスを交わした。




「政略婚ですが、これからあなたと恋をします」完結


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