初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
入社四年目の私は、総務部で人事労務を担当するグループに所属している。具体的には正社員の勤怠管理、各種申請受付、派遣社員の採用手続など。

最近は任せて貰う仕事も増えて忙しく働いている。更に二カ月前に総務部に配属された新入社員の教育係に選ばれた。

教育は半年後の三月まで続くからそれまでは仕事を続けたい。途中で教育係が変ったら新入社員にとって負担だろうし、引き継ぐ同僚にも迷惑をかけてしまうから。

その気持ちを伝えると、柊哉さんは理解してくれて三月まで仕事を続けることを了承してくれた。

入籍と親族での食事会を昨日密かに済ませたのは、そういった理由から。

結婚式と披露宴は一年後、私が退職したあとを予定している。


「柊哉さん、明日から仕事ですね。通勤は車でしたよね?」

「ああ、本当に乗っていかなくていいのか?」

「はい。一緒に出勤するところを見られては大変ですから」

柊哉さんは社内の有名人だから、女性と連れ立って通勤なんて知られたらあっという間に噂になってしまいそうだ。

「電車はかなり混む。大丈夫なのか?」

彼は自分だけ車で通勤することに躊躇いがあるのかな。

確かに込み合った電車は大変だけど、もう慣れているし、会社で結婚した事実を知られるよりはいい。

柊哉さんの妻という肩書がついたら、どうしても同僚と距離が出来てしまう。遠慮や、やっかみもあるかもしれない。

やり辛くなるのは確実だ。

今の職場の環境はとても気にいっているから、このまましっかり務めを果たして気持ちよく退職の日を迎えるのが私の希望。
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