初夜から始まる夫婦事情～一途な次期社長の溺愛は鎮まらない～
予定通り定時で仕事を終え、駅前のスーパーで買い物をしてから自宅マンションに帰宅した。

今日は和食メニューで、煮魚とポテトサラダ。それからご飯にお味噌汁といった普通のもの。

とはいえ、私にはなかなか手間のかかるもので、レシピを確認しながら作っている内にあっという間に時間は過ぎ去り、完成したのは柊哉さんの帰宅と同時だった。

「ただいま」

柊哉さんは自分の部屋に行く前に、キッチンに来て声をかけてくれた。

「あ、お帰りなさい。ご飯今出来たところです」

「いい匂いがする」

「煮魚です」

柊哉さんはふわりと微笑んだ。

「楽しみだな。急いで着替えて来る」

彼は本当に直ぐに着替えキッチンに戻って来て、出来上がった料理をテーブルに運ぶのを手伝ってくれた。

頂きますをして食事を始める。

食事中の柊哉さんの所作は育ちの良さを感じさせる洗練されているもの。彼を見ていると私も振舞いに気をつけなくてはと改めて思い、自然と背筋を伸ばしている。

つい見つめしまっていると視線に気づいた柊哉さんが不思議そうな顔をした。

「どうかした？」

「いえ、ただ柊哉さんの食べ方って綺麗だと思って」

「そうか？」

柊哉さんは少し驚いたようだった。

「はい。それでじっと見てしまいました。ごめんなさい食べ辛いですよね」

「そんなことはないが……香子の食べる姿は女の子らしいな」

「え？」

思わずどきりとした。柊哉さんの眼差しがとても優しく見えたから。

なんだか恥ずかしくなって、私は誤魔化すように早口で返事をする。

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