初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
話過ぎたのか喉の渇きを覚えたタイミングで、柊哉さんがコーヒーを淹れてくれた。
私の前にカップを置いた彼が、思い出したように言った。
「香子はどうしてうちの会社に入ったんだ?」
私の家と桜川家は昔から交流が有るそうだけれど、私はコネ入社ではなく普通に入社試験を受けて桜川都市開発の社員になった。
「父に普通に就職して社会経験を積みなさいと言われて。それで家業と同業で以前から知っていた桜川都市開発の入社試験を受けたんです」
結果として良かったと思ってる。桜川都市開発ではただの一般社員だけど仕事は合っているし、環境も良い。
その気持ちを伝えると、柊哉さんは浮かない表情になった。
「仕事を辞めるのは嫌か?」
彼はいずれ退職になる私の気持ちを心配してくれているのかな?
「いえ、大丈夫です。私の希望のタイミングでの退職にして貰えたし、最後の日まで悔いのないように働きます」
「そうか。でも気持ちが変わったら遠慮なく言って欲しい。ふたりでどうすればいいか考えよう」
「はい、ありがとう柊哉さん」
柊哉さんの私を見る目は温かい。
夫婦になったばかりの私たち。だけど想像していたより和やかな時間を共有出来ている。
私たち、きっと良い夫婦になれる。そう思えた時間だった。