初夜から始まる夫婦事情~一途な次期社長の溺愛は鎮まらない~
入籍して一ヶ月。

新婚生活は概ね順調だった。

大きなトラブルもないし、柊哉さんは寛容だ。

今日も友人と会うので遅くなると言ったら「楽しんでおいで」と快く送り出してくれた。

中には妻が夜出かけるのを嫌がる旦那様も居ると聞いていたけれど、彼はそれに該当しない。

おかげで私は後ろめたさを感じる必要もなく、友人と待ち合わせをしている豆腐会席のお店の扉を開くことが出来た。

予約してあると告げると、店の奥の個室に案内される。

和風の部屋の中央には大き目のテーブルが有り、私の幼馴染の高辻紫穂(たかつじ しほ)が席に着いていた。彼女は幼稚園の頃からの付き合いで、結婚の経緯を知っている唯一の友人。

紫穂は私と目が合うと笑顔になった。

正当派美人の紫穂の微笑む姿はまるで大輪の薔薇の開花のように鮮やかで華やか。見るものの目を惹いて離さない。

初対面の相手だと見惚れてぼうっとする人もいるけれど、私は幼い頃から見慣れているので、普通に紫穂の前の空いている席に腰を下ろした。

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